アートコラム
アートによるまち歩きの新たな楽しみ方
COLUMN /
大分市美術館長 菅 章
大分市のアートシーンは今県内外で注目されている。2015年にはアミュプラザ大分の開業やOPAMの開館などが大きな話題となったが、それだけにとどまらず、「おおいたトイレンナーレ2015」や大分市美術館の「まちなかアートフルロードプロジェクト(アートフル)」など、大分市中心市街地を舞台に、アートと日常がシンクロすることにより、これまでにない活気に満ちたアートシーンが展開した。ここではアートフルの取り組みを紹介する。
2016年が「まちなかアート遊園地」。市美術館をはじめ、県立美術館、大分銀行宗麟館、大分駅府内中央口広場、中心市街地の飲食店などを会場として、県内外在住のアーティスト約25人が「アートと遊び」をキーワードに展示・ワークショップを行った。市内各所に用意されたポイントを、遊園地のアトラクションを巡るように回遊しながら楽しむ試み。
2017年は11月8日(水)〜12月3日(日)の会期で「まちなかGO! アートみつけたい」を計画。この企画は大分市の中心市街地でアーティストが気になる場所、空間を探し調査することから始まる。それぞれの場所や店がどのような歴史をたどり、現在どのような役割を担っているかなどを探り、そこで作品を展示したり、ワークショップを行ったりすることによって、その場所の現在と過去をつなぐプロジェクトとなり、新たな都市の魅力や不思議を発見する契機となることを目的とする。参加者は、それぞれの場所を回遊するとともに、情報センターとしての美術館を拠点に街を巡ることで、アートとまちの面白さを体験してもらうのである。
アーティストが街や場所の歴史と向き合うこの企画は、単にアートをまちなかで展示するにとどまらず、赤瀬川原平らが行った超芸術トマソンや路上観察にも通じるもので、何気ない日常から芸術を発見するアート力の醸成とともにまち歩きの新たな楽しみ方への提案でもある。
VRで遊ぶまちなかマイグレートプロジェクト『ここにわ物語』とともに楽しんでいただければ幸いである。